カカオはアオイ科（旧分類体系ではアオギリ科）の常緑樹で、原産地は熱帯地方のメキシコ南部〜グアテマラ〜ベリーズなどのメソアメリカです。古くから人類に利用されていたようで、紀元前２世紀頃のマヤ文明の遺跡からカカオを入れていたとみられる壺やカカオの粉の残渣が発見されています。

学名はTheobroma cacaoといい、ギリシャ語でtheo（神の）broma（食べ物）という意味を持ちます。神に捧げられた聖なる実であったカカオは原産地がスペインの植民地になったことでヨーロッパに持ち込まれ、各国に広がっていきます。

成長すると高さ8～10メートルほどの樹木となり、幹に直接小さなピンクの花が咲きます。花には芳香があり、果実も幹に直接つきます。この果実（莢）をカカオポッドと言います。カカオポッドの中には白〜ピンク色の果肉と、白〜淡いピンク色の種子（豆）が30粒程入っています。

カカオ果実は中の実を傷つけないように取り出し、バナナの葉や木の箱に入れて発酵させてから煎って乾燥させ、香りや色が変化するまで熟成させた後、皮などを取り除き、胚乳部分を砕いてカカオニブにし、さらに炒めてすりつぶし、撹拌してドロドロの状態にしたものをカカオマスとして利用します。カカオマスを圧搾して、ココアケーキとココアバターに分離してココアケーキを粉砕、粉状にしたものが飲料用のココアパウダーと呼ばれているものです。
カカオマスにココアバターや砂糖、粉乳などを混ぜて練り上げ、温度調整して結晶を安定化させて冷却形成したものが、私たちが日常口にするチョコレートです。

日本では、チョコレート類はカカオマスやココアバターの含有量によって分類が分かれており、カカオ分が35%以上、あるいはカカオ分21%で以上でカカオ分と乳固形分の合計が35%以上のチョコレート生地を全重量の60%以上使用したものが「チョコレート」と呼ばれています。

カカオにはアルカロイドの一種であるカフェインやテオブロミン（カカオの学名に由来する）に加え、カカオポリフェノール、ミネラル、食物繊維などが含まれ、穏やかな利尿作用、興奮作用、抗酸化作用、血管保護作用、抗がん作用、神経保護作用など多くの効能があります。ヨーロッパでは滋養強壮効果がある飲み物として親しまれ、「万病に効く」と紹介され、嗜好品かつ薬品として飲まれていたそうです。コロンビアでは葉を強心薬に利用しています。また、カカオマスに含まれる油脂成分ココアバター（カカオバター）は抗酸化作用があり、肌を乾燥から守り、肌をやわらかくする作用があることから化粧品に利用されています。

日本には江戸時代に入ってきましたが、熱帯原産のため、カカオの木は温室のある植物園か図鑑の中でしか見ることができません。カカオがスーパーフードとして注目される昨今、その詳細を掘り下げてみました。今年は歴史や効能を思いながらバレンタインデーにチョコレートを食べたいと思います。

カカオの楽しみ方

カカオニブトッピング

ヨーグルトやアイスやグラノーラに小さじ1杯程度をトッピングします。カカオニブの苦みが程よいアクセントになり、美味しくいただけます。

カカオニブはそのまま食べると甘みがなく苦くて食べづらい食品です。甘みのあるものに混ぜたり料理やお菓子に隠し味として入れて楽しんでください。健康に良い食品ですが、摂りすぎると負担にもなりますし、吸収されず排出されてしまい貯めておくこともできません、過剰にならないよう少量ずつを時間をおいてとるようにしましょう。

カカオニブのコールドブリュー

＜材料＞
カカオニブ　35g
コーヒー豆    70g
水　　　    700mL

＜作り方＞
コーヒー豆を中挽きにして粉にしたものとカカオニブと合わせ、ボトルに入れ上から水を注ぎます。コーヒーとカカオニブ全体に水をなじませる為にボトルを優しく揺らします。冷蔵庫で8〜１４時間ほどおき、好みの味になるまで抽出します。ペーパーフィルターをドリッパーにセットし静かに濾して出来上がりです。

参考文献

「ハーブの写真図鑑」日本ヴォーグ社
「チョコレートの世界史」武田尚子著　中公新書
「カカオで体の劣化はとまる」井上浩義著　世界文化社
「カカオとチョコレートのサイエンス・ロマン」佐藤清隆・古谷野哲夫著　幸書房
シェアシマinfo,「カカオバターの成分や使い方を紹介｜チョコレートのテンパリングや色付け、艶出しに」, https://shareshima.com/info/9944822221,（2025年1月29日閲覧）
全国チョコレート業公正取引協議会,「チョコレート類の表示に関する公正競争規約及び施行規則」, https://www.chocokoutori.org/cont3/13.html,（2025年1月29日閲覧）

ブログ著

鈴木さちよ

ブログ監修

管理栄養士　坂本禮子

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