救民妙薬のハーブ紹介vol.10『パチョリ』
パチョリは熱帯、亜熱帯地方のインド、インドネシア、ベトナム、フィリピン、中国の少し湿気のある場所に自生するシソ科の非耐寒性多年草で、別名で「パチュリー」、「カブリン」ともいいます。
高さ40~80cmほどに立ち上がり、葉は卵形で先の方が細く、葉のふちはギザギザと鋸歯があります。寒さに弱いため、日本の気候では一年草扱い、または20度以上の室内で冬越しさせ、挿し木で増やします。
学名は「Pogostemon cablin」といいます。属名のPogostemonはギリシア語のpogon「ひげ、あごひげ」とstemon「雄しべ」に由来し、種小名のcablinは「モモのような」を意味します。
全草から精油を採り香料に、煎じて解熱剤に、乾燥すると芳香が出る葉を衣料の香り付けに、また浴剤や漢方薬としても利用されてきました。この特有の匂いはインドの最初の墨や中国の朱肉にも利用されたそうです。
独特の香りのある葉には防虫作用があるため、乾燥させてサッシェにしたものは古くから衣類の虫よけとして利用され、またこの葉が添えられたシルクは高級品の証とされました。さらに、葉を揉んだものは虫刺されの手当に、全草を乾燥させたものは生薬や漢方に用いられてきました。香りが持続するところから日本ではお香の材料にも利用されました。
アロマの世界では少ないベースノートの性質を持ち、香水作りの保留剤(成分の揮発性を落とし、香調のバランスを崩さないために添加する助剤)とされます。鬱滞、鬱血、抗炎症、瘢痕形成、健胃作用を有し、香料以外に冷え性やニキビ跡、あかぎれ、むくみやダイエットのブレンドに利用されてきました。
【注意事項】妊婦やホルモン依存型癌、乳腺症などの方は用法用量を守り専門家に相談して利用してください。
パチョリの楽しみ方
ポプリ
葉を乾燥させてポプリの材料にします。バラやラベンダー、柑橘やシダー、スパイスとの香りの相性も良く、香りの保留剤として活躍してくれます。香りには精神安定作用もありハーバルな香りを長く楽しむことができます。
ポプリ(pot-pourri)の語源はフランス語で「ごった煮料理」を意味したpot purriで、多様な材料を混ぜ合わせてつぼに入れて作ったことに由来します。花や葉、ハーブやスパイス、木の実、果物の皮、苔、精油などを混ぜ合わせ容器に入れ成熟させて作る室内香の一種。
救民妙薬では
日射病や激しい吐き気、下痢を伴う急性の病気「霍乱」の治療に用いたとあります。パチョリの全草又は葉を乾燥させたものを利用。
救民妙薬とは?
「水戸黄門様」として知られる水戸藩2代藩主・徳川光圀公が藩医穂積甫庵(ほづみほあん)に命じてつくらせた日本最古の家庭療法本(1693年)。
手帳ほどのサイズで、中風の妙薬にはじまり、酒毒・蛇咬(へびくい)・痔・しもやけ・虫歯・頭痛・脚気・腹痛・おこり(マラリア等の熱病)等、手軽に入手できる薬草を主に用いる処方397種が130項にわたって平易な言葉で記載されており、明治・大正まで続くロングセラーとなりました。
参考文献
「ケモタイプ精油小事典」NARD JAPANナード・アロマテラピー協会
「ハーブの全てがわかる事典」ジャパンハーブソサイエティー
「ハーブの写真図鑑」日本ヴォーグ社
「香りと花のハーブ図鑑500」主婦の友生活シリーズ
ブログ著
鈴木さちよ
ブログ監修
管理栄養士 坂本禮子