救民妙薬のハーブ紹介vol.5『ツユクサ(露草)』

子供の頃この花を集めて色水をつくって遊んだことがありました。口をすぼめたような青い花は、毎日朝開いて昼にはしぼみます。ツユクサ

ツユクサは日本を含む東アジア原産の一年草です。茎が横に這って伸び、ところどころにある節から根を出して枝分かれしながら旺盛に増えていきます。やわらかい葉はサラダやおひたしにもなります。身近な野草として古くは万葉集にも登場し、現代でも畑や庭の隅や道端など日当たりのよい、やや湿り気のある場所に生えているのを見かけることが多いのではないでしょうか。

効能としては発熱、下痢、喉の痛み、肌のかぶれ、湿疹などに利用されてきました。花が咲いた頃に全草を採取し、水洗い後日干しにします。これは生薬の「鴨跖草(おうせきそう)」と言います。

ツユクサの花

ツユクサの花

また、ツユクサは染料としても利用されてきました。青花紙(あおばながみ)とよばれる、下絵を描くための青色液を得るための紙があります。水に浸すとすぐに色が溶けて落ちるので下絵(友禅や紋染)を描くのに利用されたものです。ツユクサを青花(あおばな)と呼ぶこともあります。

青花紙(あおばながみ)づくりは、早朝にツユクサの花弁を採取するところから始まります。花弁を絞った汁液を天具帖などの特定の和紙に何度となくハケで塗り重ね乾燥させて出来上がります。小さく切ったものを水に浸すと、下絵を描くための青色液を得ることができます。筆に含ませて絵の具として使います。

ツユクサの近縁種にはムラサキツユクサという花も葉もツユクサより大型の種類があります。こちらは北米原産の常緑多年草。日本には明治初期に渡来しました。こちらも薬用として利用でき、全草を乾燥させて利尿、むくみなどに用いられます。

ツユクサとムラサキツユクサ

ツユクサとムラサキツユクサ

ハーブガーデンのムラサキツユクサ

ハーブガーデンのムラサキツユクサ

ムラサキツユクサ

ツユクサの楽しみ方

ツユクサのお茶

<材料>
乾燥したツユクサ 4~6g
水        300g

<作り方>
カップ1杯半の水で半量になるまで煎じて服用します。症状がある場合はそれぞれ倍量を半量になるまで煎じ、1日3回に分けて飲みます。外用には浸出液を冷ましてから冷湿布として用いることができるそうです。

 

救民妙薬では

蛇咬(へびくい)の薬として紹介されています。蛇に咬まれた時の傷の薬としたという記載とともに、利尿、感染症、湿疹、ひきつけ、しゃっくりなどの薬としても紹介されています。

救民妙薬とは?

「水戸黄門様」として知られる水戸藩2代藩主・徳川光圀公が藩医穂積甫庵(ほづみほあん)に命じてつくらせた日本最古の家庭療法本(1693年)。
手帳ほどのサイズで、中風の妙薬にはじまり、酒毒・蛇咬(へびくい)・痔・しもやけ・虫歯・頭痛・脚気・腹痛・おこり(マラリア等の熱病)等、手軽に入手できる薬草を主に用いる処方397種が130項にわたって平易な言葉で記載されており、明治・大正まで続くロングセラーとなりました。

→「水戸黄門」が作らせた日本最古の家庭療法本『救民妙薬』とは?

 

参考文献

「自分で採れる薬になる植物図鑑」柏書房 増田和夫監修
「くらしの野草と漢方薬〜ハーブ・民間薬・生薬〜」新日本法規
「身近な薬草活用手帖〜100種類の見分け方・採取方・利用法」誠文堂新光社
「心に響く!美しい「日本の言葉」2200」 西東社

ブログ著

鈴木さちよ

ブログ監修

管理栄養士 坂本禮子

 

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