節分の鬼除けに用いられる『ヒイラギ』
ヒイラギ(柊)は、モクセイ科モクセイ属の常緑小高木で、 学名はOsmanthus heterophyllus、比々良岐(ひひらぎ)、波比之波(はひしば)、比々良木(ひひらぎ)、比々羅木(ひひらぎ)ともよばれます。冬に白い小花が集まって咲き、甘い香りを放ちます。実は初めは青紫色で初夏にだんだん黒っぽくなります。ヒイラギの若木の葉にあった鋭い棘は、成木になるとその数がだんだん減ってきます。鋭いトゲは、背が低い間に、動物などに食べられないための手段だったのでしょう。食害から免れる大きさになると、形成にエネルギーコストのかかるトゲは不要なのでその数を減らしていると考えられています。また、ヒイラギは比重が0.8~0.9とかなり重くて硬く緻密な材となります。特徴を生かして、そろばんの白い珠、三味線の撥(ばち)などに使われてきました。心材と辺材の境目がはっきりせず、全体的にやや黄色味を帯びた白色系です。

ヒイラギ

斑入りの品種もあります
葉の姿が似ていて赤い実をつけるクリスマスリースの飾りになるセイヨウヒイラギはモチノキ科モチノキ属で、ヒイラギとは別の種類です。

セイヨウヒイラギ
関東一円に今でも残る風習として、節分の鬼除けとして玄関にイワシの頭を刺したヒイラギを飾ります。これを「柊鰯(ひいらぎいわし)」といいます。陰陽道の考え方では、節分の夜に方位神の「大将軍」が遊行して災いを招くとされました。これを防ぐために、ヒイラギのトゲで魔神の目を刺し、イワシの悪臭で追い払おうとしたのです。『土佐日記』(934年後半頃、平安時代に成立した日本最古の日記文学のひとつ)には、ボラの稚魚「なよし」の頭とヒイラギを元日に門のしめ縄に飾ったとあります。

節分に柊鰯(ひいらぎいわし)を飾る風習があります
また、ヒリヒリ痛むことを古語で「柊く(ひひらく)」と言いました。そこで葉のトゲからこの木は「ひひらぎ」とよばれたようです。『古事記』では東国平定に向かうヤマトタケルに景行天皇が「八尋矛(やひろほこ)」を授けますが、これは「比比羅木(ひひらぎ)」で作られた矛、あるいはヒイラギの葉を模した金属の矛と考えられています。(矛とは、長い柄の先に両刃の剣状の穂先を取り付けた武器です。)
ヒイラギの花言葉は「先見の明」。花言葉からも縁起の良い植物として親しまれてきたことがうかがえます。
江戸時代の後期『想山著聞奇集』に「万木、柊と化する神社の事」という話が載っています。下鴨神社の境内末社・出雲井於神社は疱瘡(天然痘)除けの神で、子供の疱瘡が軽く済むように祈願し、成就すると人々は境内に献木しました。ところがナンテンでもクチナシでも、境内に植えると葉が柊のようになり最後は完全にヒイラギ化するというのです。そこで通称「比良木社」「ひいらぎさん」と呼ばれ信仰を集めたというお話です。これも柊が魔除けの効果に絡めた謂れでしょう。
ヒイラギの楽しみ方
柊鰯(節分の鬼除け)

上でご紹介した柊鰯(ひいらぎいわし)です。この戸口に飾る植物はヒイラギ以外にもトベラ、アセビ、サイカチの実のサヤなど地域によっても違います。これらの植物に共通する性質は、燃やすとパチパチと音を立てることです。鬼はこの音が嫌いで寄り付かなくなると解釈されていたといわれています。
<材料>
ヒイラギの枝 1、2本
イワシ 1、2匹
菜箸または割り箸 1、2本
藁、麻紐 など
<作り方>
イワシは生のままではなく、魚焼きグリル等で焼いてしっかりと火を通します。
焼けたイワシの頭を菜箸または割り箸の先に刺し、ヒイラギの枝とともに藁などでまとめてお飾りとします。ヒイラギの枝に直接イワシの頭を刺してもよいです。

<飾り方>
鬼を家に近づけない目的で飾るため、家の中ではなく、必ず家の外に飾ります。玄関先に飾るのが一般的ですよ。飾り方に決まりはありませんが、ヒイラギの枝の部分をテープで貼って止める、紐で結びつけるなどして固定するのがおすすめです。
*2026年のブログでは、薬用というよりも日本の行事や文化に馴染みの深い植物をご紹介します。植物の新たな側面に触れていただければ幸いです。
参考文献
「有職植物図鑑」八條忠基著 平凡社
「日本のハーブ事典」村上志緒編 東京堂出版
「知っておきたい100の木」田中潔著 主婦の友社
「板目・柾目・木口がわかる木の図鑑」西川栄明著 創元社
ブログ著
鈴木さちよ
ブログ監修
管理栄養士 坂本禮子

