救民妙薬のハーブ紹介vol.9『ヘチマ』

ヘチマ(糸瓜) の別名はイトウリ、トウリ、糸瓜(しか)、Vegetable Sponge。インド原産とされ、熱帯地方、亜熱帯地方のアジアやアフリカで自生しています。今年は私たちのハーブガーデンでも旺盛に成長してぶどうの棚や夏みかんやカリンの木々を覆ってしまうほどでした。ハーブガーデンのヘチマ

ハーブガーデンのヘチマ

ハーブガーデンのヘチマ

茎は分岐してよく伸び巻きひげで他の物に絡みつきます。茎の断面は5角形。果実は円筒状で大きなものは60㎝程になります。熟すと網状の繊維組織ができ、天然のタワシを作ることができます。名前の由来は、古くは「糸瓜(いとうり)」とよばれましたが、やがて「い」が抜けて「と瓜」になり「と」は「いろは」の順で「へ」と「ち」の間にあるので「ヘチマ(へち間)」になったという説があります。

ヘチマの実

ヘチマ水は、咳、痰、利尿、むくみなどに服用したり、収斂や日焼け後の化粧水に利用したりと活用できます。蕾、若枝、若葉、果実は食用になり種子からは食用油が取れます。他にも葉の汁をあせもやおできなどに外用したという記録もあります。私の小さな頃は庭で育てている家もよく見かけましたが、利用範囲が広いのもその理由かもしれません。今年の夏は温暖化を通り過ぎて連日猛暑で、ハーブガーデンの植物もいくつか枯れてしまいました。 庭造りにも熱帯の元気な植物を増やしてみようと思うこの頃です。

ヘチマの花

ヘチマの花は鮮やかな黄色です

ヘチマの楽しみ方

ヘチマ水

夏に地上50㎝程のところで茎を切り、根元の方を折り曲げて瓶に差し込み、綿などで栓をして一晩置きます。たまった水分を「ヘチマ水」と言います。そのままでは腐りやすいので一度煮立てて濾紙で濾し、冷蔵庫で保存して利用します。
ヘチマ水500mLに対してグリセリン100mL、無水エタノール300mLを加えたものを手作り化粧水として利用することができます。
また、ヘチマ水500mLを半量になるまで煮詰め、砂糖で甘みを加えて3回に分けて食間に服用します。ヘチマ水でうがいをするなど利用範囲も広くあります。

ヘチマのタワシ

1日でできるヘチマタワシの作り方です。ヘチマの果実を収穫し、10~15㎝の利用しやすい大きさにカットします。鍋にたっぷりの水にヘチマを入れ落し蓋などしながら20〜30分煮ます。煮上がったものを、水に浸け粗熱をとり、火傷に気をつけながら皮をむきます。ザルなどに並べて天日干しをして出来上がり。体を洗ったり、鍋磨きや緩衝材として利用できます。ヘチマたわし

救民妙薬では

「癰疽(ようそ)薬」としての記載があります。「癰疽」とはオデキのことを指します。つまり細菌による皮膚感染による化膿性炎症のことですが、古くは現代病と言われている糖尿病、癌、結核、性病など重篤な病気が含まれていた可能性があります。

「ヘチマの黒焼きを白湯にして1日2〜3度に分けて服用」とあります。

救民妙薬とは?

「水戸黄門様」として知られる水戸藩2代藩主・徳川光圀公が藩医穂積甫庵(ほづみほあん)に命じてつくらせた日本最古の家庭療法本(1693年)。
手帳ほどのサイズで、中風の妙薬にはじまり、酒毒・蛇咬(へびくい)・痔・しもやけ・虫歯・頭痛・脚気・腹痛・おこり(マラリア等の熱病)等、手軽に入手できる薬草を主に用いる処方397種が130項にわたって平易な言葉で記載されており、明治・大正まで続くロングセラーとなりました。

→「水戸黄門」が作らせた日本最古の家庭療法本『救民妙薬』とは?

 

参考文献

「自分で採れる薬になる植物図鑑」柏書房 増田和夫監修
「ハーブの写真図鑑」日本ヴォーグ社
「救民妙薬注釈」水戸市医師会会史編纂委員会

ブログ著

鈴木さちよ

ブログ監修

管理栄養士 坂本禮子

インスタグラムでもハーブ、庭作り、身近な植物などについて発信しています

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ハーブ事典でもこのハーブをご紹介しています

 

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