救民妙薬のハーブ紹介vol.4『ノビル』
ノビル(野蒜)は中国原産で、日本へは古い時代に渡来したようです。『古事記』にも「野蒜つみに蒜つみに」と記載があります。中国では古来より薬用として利用されていたようですが、日本では食用にする山菜として親しまれてきました。
私も小さなころ祖母とノビルとりをして家族のお酒のあてとして食卓に上っているのを記憶しています。食用とする場合は全草が柔らかいまだ花が咲かない3〜5月頃にスコップなどで鱗茎(りんけい、地下茎の一種で養分を蓄えた葉が球状に重なったもの)ごと掘り採取し、よく水洗いし薄皮をはがして調理します。ぬた、雑炊、炒め物などで食します。
民間薬として利用する場合は全草を乾燥させて煎じて用いるか、鱗茎を潰してその汁を患部に塗るなどして利用されました。血を補い、安眠、滋養強壮、食欲不振、体調維持、免疫力向上、消化促進、かゆみ止めなどに利用されたと記載があります。
全草にニラのような匂いがありますが、タマスダレという有毒植物にもよく似ているので間違えないように注意してください。
ノビルの楽しみ方
ノビルのぬた料理
<材料>
ノビル 10本程度
塩 適量
味噌 大さじ1/2
砂糖 大さじ1/2
酢 大さじ1/2
<作り方>
ノビルはよく洗い、鍋に塩を少々入れ、球根と葉をさっと茹でます。
あらかじめ混ぜておいた味噌、砂糖、酢に水気を切って刻んだノビルを混ぜて出来上がり。白味噌を使うと上品な味に仕上がります。お好みで菜の花を茹でたもの等を合わせても。生で食す時は、味噌+マヨネーズで和えても美味しくいただけます。
外用に
腫れものの痛みには、鱗茎の葉のついた全草を金網の上で黒く焼いて粉末にしてごま油と練り合わせて患部に塗ります。また、かゆみや痛む患部には鱗茎をよく潰して小麦粉と練り合わせて塗布するとされていました。
救民妙薬では
五膈の病(吐き気を伴う胸部の病)の場合、又食用、外傷・打撲にはすりつぶしてぬるとあります。
救民妙薬とは?
「水戸黄門様」として知られる水戸藩2代藩主・徳川光圀公が藩医穂積甫庵(ほづみほあん)に命じてつくらせた日本最古の家庭療法本(1693年)。
手帳ほどのサイズで、中風の妙薬にはじまり、酒毒・蛇咬(へびくい)・痔・しもやけ・虫歯・頭痛・脚気・腹痛・おこり(マラリア等の熱病)等、手軽に入手できる薬草を主に用いる処方397種が130項にわたって平易な言葉で記載されており、明治・大正まで続くロングセラーとなりました。
参考文献
「身近な薬草活用手帳」誠文堂新光社
「自分で採れる薬になる植物図鑑」柏書房 増田和夫監修
「くらしの野草と漢方薬〜ハーブ・民間薬・生薬〜」新日本法規
「救民妙薬注解」水戸市医学会史編纂委員会
ブログ著
鈴木さちよ
ブログ監修
管理栄養士 坂本禮子