救民妙薬のハーブ紹介vol.1『クチナシ』
甲辰の令和6年(2024年)の新年が明けました。弊社は今年20周年を迎え、この毎月ハーブの紹介をするブログを書き始めてから10年が経ちました。関わってくださった皆様には心より感謝申し上げます。
節目となる今年は、地元茨城県の歴史上の人物、黄門様でも知られる水戸藩第2代藩主徳川光圀公が創案した日本最古の家庭療養本『救民妙薬』を手本に、身近な薬用植物やその利用法を現代版に置き換えて紹介していきます。
1回目の今回は、お正月の料理でも利用されることのあるクチナシを紹介します。
クチナシは、国内では静岡以西、主に西日本の乾燥した丘陵地帯の林内に生える常緑低木。観賞の目的で庭木としても栽培される 高さ1〜5mの樹木です。6〜7月の初夏に白い花を咲かせ、11月〜12月に赤黄色の果実をつけます。花は、ジャスミンを思わせるような特有の強く甘い香りを漂わせ、昔から香水の原料としても知られた存在でした。
ロマンチックな香りはどんな洋服にも似合うのでアメリカのエチケットブックには「若い男性が女性をダンスパーティーに誘う時にはガーデニア(クチナシ)の香りがおしゃれだ」とか書かれています。海外では「ガーデニア」と呼ばれていることがうかがわれます。
木の材質がツゲに似ていることから、シャムツゲとも呼ばれて細工物や将棋の駒などに利用されます。駒だけでなく、将棋盤や基盤の足にはクチナシの果実がかたどられて「他人の勝負に口を挟むな」という意味が込められているそうです。
果実は飛鳥、天平の時代から染料として利用されており、毒性がないため、栗ご飯や栗きんとん、たくあんなどの食品の着色料としても用いられて来ました。薬用としては果実が用いらえてきましたが、花にも同様の作用があるとされています。種子は化粧品にも利用されます。
クチナシの楽しみ方
さつまいもとりんごのきんとん風
~クチナシの色付けで鮮やかに~
<材料>
クチナシの実 1個
さつまいも(中) 2個
りんご 1個
砂糖 適量
水 500g
塩 少々
レモン お好みで
シナモン お好みで
プルーン お好みで
<作り方>
①さつまいもの皮をむき輪切りにする。りんごも皮をむきさつまいもと同じようにスライスする。
②鍋にさつまいもを敷き詰め、りんごをその上に並べ、砂糖を上に重ね入れる。③別な鍋に水とクチナシの実を半分に割り、少し砕いたものを入れ沸騰させ15分ほど煮立てる。④③の色が充分抽出されたものを②のさつまいもとりんごの鍋に入れ、塩をふり弱火で焦がさないようにコトコト20分ほど煮込む。落し蓋などをするとなお良いでしょう。
⑤塩をひとつまみとレモン汁をお好みでレモン半量ほどしぼり入れる。さつまいもやりんごがやわらかくなったら出来上がり。
*お好みでプルーンを添えたり、食する時にシナモンパウダーをひと振りするとアクセントになってオススメです。さつまいもの形が残ったままでも、少しつぶしてねっとりさせてもどちらも美味しいです。クチナシを入れることで黄色が鮮やかなきんとんに仕上がります。
煎じ液
乾燥した果実5~10gを水カップ3で半量になるまで煎じ、これを1日量とし、3回に分けて服用します。腰痛などに服用すると良いといわれています。
外用
乾燥した果実を粉末にしたものに小麦粉を3分の1程度混ぜ 酢を加えて練ります。これを布に伸ばして打ち身や捻挫の患部にあて冷湿布として利用します。
救民妙薬では
諸魚毒解(もろもろのうをのどくけし)、諸毒解(しょどくけし)、瘡腫(もろもろのかさ、皮膚病)、咽喉腫痛、めまい、くじき、鼻血、火傷などの手当の方法が掲載されています。肌が腫れて膿をもったものなどには、クチナシの果実を黒焼きにして粉にしたものを外用するとあります。
救民妙薬とは?
「水戸黄門様」として知られる水戸藩2代藩主・徳川光圀公が藩医穂積甫庵(ほづみほあん)に命じてつくらせた日本最古の家庭療法本(1693年)。
手帳ほどのサイズで、中風の妙薬にはじまり、酒毒・蛇咬(へびくい)・痔・しもやけ・虫歯・頭痛・脚気・腹痛・おこり(マラリア等の熱病)等、手軽に入手できる薬草を主に用いる処方397種が130項にわたって平易な言葉で記載されており、明治・大正まで続くロングセラーとなりました。
参考文献
「ハーブの写真図鑑」日本ヴォーグ社
「日本のハーブ事典」東京堂出版
「自分で採れる薬になる植物図鑑」柏書房
「救民妙薬注解」水戸市医師会編纂委員会編
ブログ著
鈴木さちよ
ブログ監修
管理栄養士 坂本禮子