間伐材を活用したワークショップなど
森と人の橋渡しをする”もりとわ”

[私たちの見つけた本当にいいもの]第4回目は、日本や茨城県の木を使用した木工品の製作・販売や、森林の大切さをワークショップとともに伝える活動を行っているお母さんたちのグループ “もりとわ” さんにお伺いし、代表 中野敦子さんと清宮美香さんにインタビューさせていただきました。

 

インタビューさせていただいた ”もりとわ” 代表中野敦子さん(左)清宮美香さん(右)

聞き手/鈴木ハーブ研究所 滝、雨谷

活動のきっかけは
荒れている日本の森の現状を知って



-まずは活動内容と始められたきっかけを教えてください

 

中野さん:“もりとわ”を始めたきっかけは、平成29年に森林整備をしている静岡県のNPO法人の講演会に参加したのがきっかけです。

話の内容としては、日本は森林に恵まれているけれども、外国からたくさんの安い木材を大量に輸入している。その結果、国内の林業が立ち行かなくなり、森林が荒れているので、間伐を行い、手入れをする必要があるという話でした。
この講演を機に出会い、意気投合した私たちお母さん6名で平成30年1月に”もりとわ”を結成しました。

 

― “間伐”とは何ですか?

 

中野さん:森は大まかにいうと自然の森と人工林の2種類あり、日本は森の4割ぐらいが人工林といわれています。

“間伐”とは、人工林に苗を植えた後、主要な木を太く大きく育てるために、過密になった立木を間引く(切る)ことをいいます。

戦後に今後の木材需要を予測し人工林を増やしたのですが、1964年に木材輸入自由化が制定されると、国産の木材より安い輸入木材が使われるようになり、間伐などの手入れをせずに放置される森が多くなってきました。結果、林業に従事する方も減少するという悪循環がずっと続いています。

一方で外国の熱帯雨林は、1分間に東京ドーム約2個分というものすごいスピードで木が伐採されており、しかも日本は、世界の中でも熱帯雨林の木を輸入しているトップクラスの国なのです。
これらの事実を知り、森が好きだったのでショックを受けました。

昭和30年は94.5%あった自給率が平成14年には18.8%まで落ち込む。少しずつ回復しているがまだ令和4年度で40.7%にとどまっている(引用:林野庁|木材供給量及び木材自給率の推移)

 

―間伐など森を手入れしていないと、どのような問題が起こるのでしょうか。

清宮さん:土砂崩れが起こりやすくなります。
広葉樹の林だと、根っこも、広く深く、複雑なのですが、
人工林の針葉樹である杉は縦に根を張る傾向にあります。また人間が扱いやすくするために太い直根を切るため、根が弱く根倒れしやすくなります。

中野さん:あと間伐をしないと、空間が狭いので枝葉は広がらずに、上にだけもやしみたいに細く高く伸び、根も弱くなります。日光も入らず地面が真っ暗なので、小さい植物や虫も少なく生態系も貧しくなります。結果として山の保水力も弱くなります。

間伐されていない人工林。幹が細い木が密集しており根も弱いため、土砂災害などが起こりやすくなる

楽しい思い出とともに
木の良さを伝えていくワークショップ

中野さん:ただ、自分に何ができるか考えた時に、まだ子供が小さかったため、実際に自分自身が森に入って間伐を手伝うことは難しいなと感じて。

私にも出来ることを考えた時に、“もっとこの事実を伝えていくことで行動が変わる人が増えるのでは”と思い、ワークショップと組み合わせて森や木のことを伝えていく活動をしようと考えました。例えていうなら「森」と「人」との橋渡しのようなことです。
他にも間伐材を使用した木工品の製作・販売などを行っています。

 

ワークショップは間伐材を使用し、チャームやお箸づくりなど、子供でも体験できる内容となっています。木を削ると粉が出て良い香りがしますし、木目も木によって全て違うので、 五感が刺激されるのも良い点です。楽しんで体験していただくことで木にポジティブな印象を持っていただきたいと思っています。

― “もりとわ”という名前がすごく素敵なのですがどのような意味が込められていますでしょうか。

清宮さん:“もりとわ”という名前は、子供たちが大きくなっても、健やかな森がずっと長く永久に続いてほしいという願いを込めて名付けました。平仮名にして子供も読めるネーミングにしています。

やはり空気や水をきれいにしてくれるのも森ですし、自分達も自然の中の一部なので。

間伐材でチャームを作るワークショップ(2023年11月 水戸市森林公園で行われた青空市の様子)

ワークショップの創作物 左上:コンテナ、左下:クリスマスチャーム、右上:ペアチャーム 右下:お箸

 

間伐材や除伐材を使用した商品
家事や子育ての経験から出てきたアイディア

― “もりとわ”さんでは木材を使用した商品開発も行っていますが、「森のやさしいセンタク」は、いばらきデザインセレクションに選定されていましたね。

 

中野さん:

商品開発のきっかけは“もりとわ”に協力していただいている茨城県大子町の川井材木店さんが洗濯板を作っていたのがきっかけです。

川井材木店さんは自分たちで木工クラブを運営したり、珍しい木など多くの種類の木を保管するなど、日本の森林や木材の啓蒙活動もされている会社さんです。

最初は大きい洗濯板を制作されていたのですが、“もりとわ”ではサイズを小さくする提案をしました。スペースを取らないですし、見た目も可愛いです。
子供が泥んこで帰ってきた時や食べこぼしなど、 洗濯機で洗う前洗いに便利かなと思い、川井材木店さんとともに企画・開発しました。

「森のやさしいセンタク」は、「山」に限らず私たちの身近な公園等で伐採された樹木など、通常は焼却処分されてしまう木材も材料として幅広く活用しています。木の種類も様々で、ヒノキ、桜、イチョウ、など約10種類あります。

 

清宮さん:名前も“洗濯”と国産の木材を“選択”するという意味をかけて、あえてカタカナで「センタク」にしました。

「森のやさしいセンタク」は、森も川を通して海に繋がっている点を意識しました。水が豊かできれいなのも森の恩恵だと思います。山が豊かなところはお米も美味しいですし、海がきれいだとお魚も美味しいですよね。最終的には全部自分たちに帰ってくると思っています。

だからこの「森のやさしいセンタク」以外にも、例えば家具を買うときに国産の木の家具を選択するとか。全部は難しいかもしれないけど、“選択”する時に森のことを考えてくださる方が増えたらいいなと思っています。

2019年度いばらきデザインセレクションに選定された”森のやさしいセンタク”。誰でも使用できるように利き手を問わず使用でき、お手伝いする子供でも握りやすい形にしている

 

森の現状を知る、日本の木を選ぶことで
将来の自然環境も変わってくる

- この記事を読んでいる方に改めて伝えたいことはございますか?

 

中野さん:やはり子供の将来はいいものであってほしいと誰もが願っていると思います。
将来、森が無いとか、綺麗な水が手に入らないとか、作物が育たないとか、そんな世の中は誰も望んでいないと思うので、まずは森の現状を知ってほしいなと思います。

木を切ることも悪いことだと思われがちですが、“間伐”に関しては森を育てる一環の作業であり、切った木を私たちが使うことで、全体が巡っていく、循環していくということを知っていただきたいですね。

また、“選ぶ”という行為は誰にでも取り入れやすい行為だと思っています。
お野菜では“地産地消”が浸透していると思いますが、 木材も同様に“地産地消”がすごく大事だと思います。何か木製品を購入する時に「地元の木」「日本の木」を“選ぶ”という意識がもっと浸透すれば変わっていくと思っています。

 

取材日に活動されていた“もりとわ”メンバーの皆さん。 製作スペースの隣で子供達は元気に遊び、皆さんが笑顔で活動されているのが印象的でした

 

”もりとわ”について

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moritowa2018@gmail.com

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