農業廃棄物をファッションとして生まれ変わらせる
染色クリエイター「futashiba248(フタシバ)」

[私たちの見つけた本当にいいもの]第2回目は、エシカルな物作りをしているクリエイター「futashiba248(フタシバ)」さんを訪ねました。
農家さんから譲り受けた農業廃棄物を使用し染色する活動をしているお二人に
始めたきっかけや、活動に込められた想いなどを、茨城県土浦市にあるショップを兼ねた工房でお話をお伺いしました。

 

PROFILE
futashiba248(フタシバ)
2018 年8 月設立。農家さんから譲り受けた農業廃棄物を使用し染色する活動を行う。染色した商品をきっかけに地域や農家を知ってもらえたら、というストーリー性を大切に故郷の茨城県を拠点に夫婦で活動している。名前の由来は、“futa”は“ふたり”と、農業廃棄物を“ふたたび”使うという意味、“shiba”は、柴犬の”しば”から。茨城県の形が柴犬が遠吠えしていると言われ、
二人とも柴犬が好きだったので。柴犬が誠実な性質を持っているので、そういった姿勢でありたいと思い名付けた。248は、“futashiba” を数字にしたもの。

聞き手/鈴木ハーブ研究所 滝、高橋、雨谷

 

“地域の良さを、ファッションを通して知ってもらいたい” と想ったのがきっかけ

──:お二人の経歴と、futashiba248を始めたきっかけを教えてください。

将史さん:彼女は長崎県出身、私は茨城県出身で、もともとは、服飾を学ぶために入った、東京のモード学園で出会いました。卒業後は、別の会社に就職しましたが、「いつか二人で一緒に仕事したいね。」という話をしていました。

それぞれ別の会社で働いていた時に、父から誘われて、茨城県大子町の藤田観光りんご園さんに、りんご狩りに行ったことがありました。オーナーの藤田さんとお話した時に、「地元出身でも大子でリンゴ狩りできることを知らない人がいるよ。若い人で知ってる人は少ないよ。」という話を聞きまして、地域の良さを、染物やファッションを通して知ってもらいたい、PRできないか、と思ったのが一つのきっかけです。

裕子さん:草木染にも興味があり、ちょうどタイミング良く、藍染めの体験をしたところでした。
茨城県の水海道にある染色村で、佐古さんという今も現役の方から藍染めを体験させていただき、梅とかリンゴなどの植物の木からも生地を染められること教えてもらい、それがとても良いヒントになりました。

茨城県が魅力度最下位とずっと言われていましたが、県外出身の私から見れば、メロン・栗・ピーマンなど、こんなに生産量日本一の食材のものがあるのに、知られていないのはもったいないと思いました。

 

生地のコットンも、土に還るもの、作る人達のことを考えられたものを使用しています

 

──:染色の工程はどのような工程になりますか?

裕子さん:まずは、農家さんに伺って、廃棄される農作物をもらいます。りんごの場合は、剪定した枝の皮を使うので、鉈で削って皮を取ります。

農家さんから譲り受けたぶどう。これから煮出して染料にする

梅の木とぶどうの葉。「煮込んでいるときは、梅の木は少し甘酸っぱい匂いがします。ぶどうの木はすごくいい匂いがします」

工房で農作物を煮出して染料を作る

その皮を煮詰めて染液を煮込みます。煮込む時は薬品は使わず、水のみで煮詰めます。
染めた色は、植物によって色の濃淡がありますが、淡い優しい色が出るというのも草木染の特徴かと思います。

将史さん:染液を作ったら、布を染める作業になります。デザインし裁縫された洋服の状態のものを染めて、販売し、最終的に着なくなったものは土に還る形になります。

 

──:お洋服の生地も土に還るものを使用しているんですか?

裕子さん:自分達で作っているものは、基本オーガニックコットンやリネンの天然素材のものを使用しています。草木染めは自然の生地しか色が入らないので、ポリエステル・ナイロンなどは使用していません。また、コットンも、オーガニックで労働環境に配慮されたものを使用しています。というのも、コットンを作る過程で、農薬をたくさん使用し、それが原因で農家さんが病気になったりすることがあるからです。
ただのコットンではなく、作る人達のことを考えられた、オーガニックのものを出来る限り使用しようと決めています。

イラストレーターcoccoryさんに描いてもらった、 ”りんごが取れて、草木染めをして、土に還るまで”のコンセプトが描かれたポストカード

地域活性したい想いがきっかけでしたが、後からアップサイクルにも繋がっていることに気づきました

──:最近はどのようなお仕事が多いですか?

将史さん:最近はお客様からのオーダーのお仕事が多いです。シルクの反物があって使用しないので、それを染めてお孫さんに洋服を作りたいというお客様もいました。

裕子さん:農家さんがご挨拶の時に配る手ぬぐいを染めてほしいというオーダーもありました。自分達で作っている農作物で染めたという話のネタにもなりますよね。
他にもふるさと納税で、加工した農産物と一緒に、草木染めしたものを入れたいというオーダーもありました。

──:こんなに広がりが出て展開していくのが面白いですね。最初始めた時はこのような広がりは予想していましたか?

将史さん:全く予想していませんでした。あとはお客様からヒントをいただくことも多いです。名刺にアップサイクル染色クリエイターと入れていますが、それは、お客様から「futashiba248さんがやっていることは、アップサイクルということじゃない?」と教えていただいたからです。

※アップサイクル:本来であれば捨てられるはずの廃棄物に、新たな付加価値を持たせ、別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせること。

裕子さん:最初は地域活性や農家さんを知ってもらいたいというのが仕事のきっかけでしたが、後から、アップサイクルやエシカルにも繋がっていると気づきました。

洋服をお預かりして染め直す依頼も多い

 

──:マスクを作ったきっかけなどはありますか

裕子さん:futashiba248をはじめて2年目の時に新型コロナウィルス感染症が発生し、何か役に立つものは作れないか、と考えていた時に、東京の和紙を専門に扱っているキュアテックスという会社と出会ったのが大きいですね。

将史さん:その会社にキュアシートという和紙があるのですが、それが抗菌だけではなく、土に還した時に、微生物の繁殖を促し、その土壌を良くするという効果があって、トマト栽培している所に埋めたら、トマトのリコピン濃度が上がったという研究データがあったんです。すごく面白い付加価値だと思いました。このマスクも、キュアシートと同じ成分の和紙を使用していて、同じように土壌を良くしたりする効果があるそうです。和紙の繊維も染めやすく適していました。

捨てられてしまうものでも、生まれ変わらせることが出来るんだよ、ということを知ってほしい

──:お仕事している中での喜び、嬉しかったことは何ですか?

将史さん:一番うれしかったことは、農家さんが喜んでくれたことと、栗の加工会社さんから、「栗の可能性を広げてくれた」と仰っていただいたことですね。「ありがとう」、という言葉が響きました。

裕子さん:農家さんから感謝いただけると、やっててよかったなと思います。

 

──:今後考えている取り組みはありますか?

将史さん:染物に使用した後の植物を乾燥し粉砕にして、紙を作ったりとか
農作物のオブジェをインテリアとして飾ったりしてみたいです。
例えば、ここに飾ってあるオブジェですが、実はピーマンの枝なんです。

農家さんに捨てられていたピーマンの枝をオブジェに

裕子さん:これは農家さんからもらったんですが、役目を終えたピーマンが引っこ抜かれてそこらへんに置かれて乾燥されていたものを、たまたま発見して、すごく造詣としてかっこいいと思い、もらってきました。農家さんに「すごくかっこいいですね」と言ったら、「え、そうなの?」という反応でしたが(笑)

あとは一昨年から、農家さんで染物体験することもしています。
”藤田観光りんご園”さんでは、りんご狩りやアップルパイを食べながら染物体験を行いました。また、昨年は、小美玉市にある”やわらぎファーム”さんで、ブルーベリー狩りをして、ブルーベリーアイスを食べ、ブルーベリーで染めものをするなど、ブルーベリーを存分に楽しむワークショップを行いました。
今までハーブで染めたことがないので、ハーブも使って染めてみたいですね。香りも良さそうです。

小さいお子さんなど体験すると喜ばれる方が多いので、これからの若い世代の方々に、農作物でも捨てられてしまうものを染料に使うことで、生まれ変わることが出来るんだよ、ということを知ってほしいです。

【SHOP INFO】
住所:茨城県土浦市板谷1-4003-23
TEL:050-5372-2803
営業時間:11:00-16:00
※不在の場合がある為、ご来訪の際は事前にご連絡をお願いします
※SNSでもその日の営業時間のご連絡をしております

定休日:不定休
https://www.futashiba248.com/
https://www.instagram.com/futashiba248/

取材後期:

futashiba248さんのお話をお伺いし、農業に対する認知の低さや、綿の生産者の課題を再認識しました。
また、印象的だったのは、futashiba248さんの作品が、優しく暖かい色で、かつデザイン性も高く、「いいな、身に着けたいな」と思える作品ばかりだったことです。
エシカルな背景もさることながら、”作品自体が良いもの”であることが、多くの人の共感を得ている理由かもしれません。
”共感いただける商品や体験を通して、課題を考えるきっかけが増えれば”という想いの元に、お二人が一歩づつ着実に前進している姿勢が素晴らしいと思いました。

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