富良野自然塾 中島さんインタビュー
“自然環境を守るために私達ができること”

鈴木ハーブ研究所では、自然環境への考えを深めるために、毎年『富良野自然塾』のワークショップを受講しています。今年も富良野自然塾を弊社で開催し、弊社スタッフだけでなく、インターンシップの学生、地域の方々とともに受講しました。

また、今回はインストラクターの中島吾郎さんに富良野自然塾の最近の取組みと、自然環境を守るために私達にできることをお伺いしました。

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富良野自然塾とは?

ドラマ「北の国から」の脚本を手掛けた倉本聰氏が塾長をつとめ、ゴルフ場跡地を元の森に還す「自然返還事業」や、そのフィールドを使った「環境教育事業」などを行っています。北海道の大自然を五感で感じながら体験するプログラムは、演劇的手法を用いたドラマチックな表現や仕掛けによって展開し、地球環境を楽しく学ぶことができます。

参照:富良野自然塾公式サイトより

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聞き手:鈴木ハーブ研究所 代表鈴木、スタッフ疋田、スタッフ雨谷、インターン栗丸、インターン本田

 

 

富良野自然塾 インストラクター 中島吾郎さん

富良野自然塾 インストラクター 中島吾郎さん

旅行で発生したCO2量の木を植える
“ゼロカーボントラベラー”

雨谷:富良野自然塾の最近の活動内容を教えてください。

 

中島さん:以前から活動している自然返還事業の森作りや、環境教育事業の他に、
新たに昨年から「ゼロカーボントラベラー」というプログラムを始めました。
富良野には、たくさんの観光客が来るのですが、本当は自然環境のことを考えたら旅行しないほうがいいんですよね。

でも、旅行って楽しいですし、新しいことを発見できるし、知らない街に行ってみたいというのは、誰もが持つ憧れだと思うので、旅行するのをやめましょう!とは言いたくないんですよね。

なので、富良野に来たお客様に、移動や宿泊でかかったCO2量を換算してもらい、その分のCO2量を吸収できる木を植えて、かかったエネルギーをゼロにしよう、というプログラムを始めました。

 

雨谷:そのアイディアは、富良野だけでなく、全世界で使えそうですね!

 

中島さん:そうですね。富良野から出たアイディアですが、全国の観光地に広がってほしいと思います。
もう1つ良い点としては、観光地へのリピート率が上がることです。木を植えたら、木が育った所を見たくなりますよね。
家族で木を植えた所にもう一度行きたいとか、今度は恋人を連れていってみようとか。リピーター効果もあり観光地にも環境にもwinwinな取組みなんです。

また、自分がどの程度CO2量を出したのか、見える化できる仕組みにしています。どの移動方法を利用したのか、移動はレンタカーか公共交通機関か、食事はお弁当かバイキングか、などの項目をチェックしてもらうことでCO2量を導き出し、木を何本植えればよいかが分かるツールを用意しています。

 

雨谷:自分がCO2量をどの程度出していたのか、気づきにもなるのでいいですね。「ゼロカーボントラベラー」という名前が有名になって、全国で実施する観光地が増えるといいですね。

 

中島さん:はい、どんどん使ってください(笑)

旅行中に出したCO2をオフセットするために木を植えるゼロカーボントラベラー

旅行中に出したCO2をオフセットするために木を植えるゼロカーボントラベラープログラム

 

自然環境を継続的に考える、生活や教育の中に取り入れる

雨谷:富良野自然塾は今年で18年目になるかと思いますが、
始めた当初と比較して、自然環境にまつわる人の意識は変化したように感じますか?

 

中島さん:変わったと思います。2011年の震災前と後で一度変わった気がします。
でも人間は忘れてしまうので、継続的に人々に伝えていかなければいけないと思っています。

被災した高校生たちが、震災から数か月後に富良野に修学旅行に来て、「裸足の道」というプログラムを受講したのですが、そのプログラムが終わった後に、飲み物として配った水で足を洗っていたんですよ。
それを見てびっくりしてしまって。「数か月前は水を得るために給水所に並んで大変だったのに。配られた水は足を洗うための水じゃないでしょ」と。
富良野の子供達は、僕らのプログラムを小学生の時に1度受けてもらうけど、継続的に、中学校、高校、大人になっても受けてもらいたいと思っています。
僕らのプログラムじゃなくていいので、自然環境について継続的に学び、意識を植え付けないとなかなか浸透しないと思っています。

環境教育は幼少教育の時から出来ると言われていて、例えば算数を習う時にも、ドイツだったら「家の前にゴミ袋が5個置いてあります。清掃の人が2個持っていきました、残り何個ですか」というような例題を作るそうです。
算数の勉強だけど、同時に環境意識も高まりますよね。
日本だと「銀行に5万円の貯金があります。2万円使ったら残りは何円ですか?」という感じでしょうか。
教育の中にも、全体的に環境意識を上げていくような工夫をしないと、局所的に伝えていっても、なかなか浸透しないんじゃないかと思います。

 

鈴木:ドイツは街がとてもきれいですよね。1日3回くらい、かっこいいユニフォームを着たお兄さんが、カッコいい清掃車に乗ってゴミを回収に来ます。
公園もたくさんあってきれいです。
グランドも芝ではなく雑草を刈り込んでいて、ハーブもたくさん生えています。自然のままで人が少し手を加えてきれいにする、という管理方法ですね。

 

中島さん:自然環境に関してだと、化粧品メーカーも、商品を作ったらゴミが出てしまうので、ジレンマがあったりするんじゃないでしょうか。

 

鈴木:企業活動しながら何ができるのか、どうしても矛盾を伴いながらなので、その中で少しでもフェアトレードなどできればと思っています。あとは、自然の対価をいただくわけだから、そこは地元の産業や農業、工業、芸術など、生きていくのに必要なもの、継続性があるものに還元したり、将来のために役立てることが出来れば、企業が存在する意味というのが出てくるのかなと思っています。

ネットや映像で見るだけはなく、直接体験することの大切さ

雨谷:FeelHerbを読んでくださる方は、30-40代の女性が多いのですが、その方々が自然環境を守るために実施できることはありますか?

 

中島さん:僕が好きな宮崎駿監督のエピソードがあるんですけど、お子さんがいるお母さんが宮崎駿さんに「うちの娘、トトロが大好きで30回くらい見てるんですよ」と言ったところ宮崎監督が「トトロは1回観ればいいから、それよりも森に連れていってあげなさい」とおっしゃったそうです。ものすごく核心をついてますよね。

親御さんの中には、もしかしたら自然の中に行ったら「自然にまつわる知識を子供に教えてあげなきゃ」と思う人もいるかもしれませんが、それよりも、昨日蕾だった花が咲いているとか、この虫の動き面白いとか、花の良い匂いがするとか、知識ではなくて、まずは自然を体験することが重要なんだと思います。一緒に遊ぶでも、泳ぐでも、作物を取るでも、何でもよいので、一緒に自然を体験する機会を大人が提供してあげることがまず大事だと思います。

 

鈴木:自然と直接触れ合って遊ぶことが大事かもしれませんね。
今は、カブトムシが死んでしまったら百貨店に行って買い直してもらう、と言う子もいるらしいです。
“買うもの”“壊れたらリセットすればいい”と思っているのかもしれませんね。
虫がどうなったら死んでしまうのか、“生き返らないんだ”、といったリアルな体験を小さい頃にした方がいいと思います。

 

中島さん:全国で「森のようちえん」という活動が広まっているので、参加していただくのもいいと思います。「森のようちえん」は遊具を使用せずに外で遊ぶ体験をメインで行っています。
今は、昔より子供の高所からの転落事故が増えているらしいのですが、それは高い所から飛んだりする経験がないからだそうです。どれくらいの高さから飛べば自分の限界なのか、痛いのか、怪我をしてしまうのか、分からない子供が多いそうです。コンクリートは固くて、土は柔らかいなども、経験してみないとわからないですよね。そういった経験は、自然の方が教えてくれるので。なんせ土の地面は凸凹なので、コンクリートのまっすぐな地面しか歩いていない子は転んだりします。でも、本当は凸凹の地面を歩くことで体幹が鍛えられたり、バランスを学んだりするんですよね。公園でも、海でも、川でも、ハーブ園でもいいと思います。

「森のようちえん」で遊ぶ子供たち

「森のようちえん」で遊ぶ子供たち

一人一人ができることを実行する。周りの人に話してみる

中島さん:あとは、自分ができることを探していけばよいと思います。
友人である旭山動物園の園長さんの話なのですが、彼はカップラーメンが大好きでカップラーメンマニアだったんです。また彼はオランウータン保護活動をしているのですが、オランウータンがいるボルネオではパーム油がとれるアブラヤシを植えるために、木が切られ、オランウータンが住む森がどんどん無くなっているんです。そして、そのパーム油がカップラーメンを揚げるために使用されていることを知って、彼はカップラーメンを一切食べるのをやめたそうです。ただ、パーム油に関連した食品を一切食べないとなると、人生の楽しみが大きく減ってしまうので、「カップラーメンは一切食べないけど、他の食品は食べる」という話をしたところ、それを聞いた園のスタッフが「じゃあ僕はカップラーメンはやめられませんがフライドポテトやめます」といった輪が広がったそうです。

 

雨谷:自分ができることを少しずつ実行しているのですね。

 

中島さん:そうです。そして周りの人に話して輪を広げていくというのが、すごく大事なことだと思います。「あ、僕もこれだったらできるかもな」と少しずつ広がっていくのがいいですよね。

 

 

<取材後記>

”自然環境を守るためにできること”を考えると、課題が大きすぎてハードルが高い、と思いがちですが、
中島さんのお話しを伺い「小さなことでも良いので無理せず実践すればよいのだ」と気づかされ少し気が楽になりました。
そして、これからは、積極的に家族や友人とも、話してみようと思いました。
一人ずつの一歩が、周りの人と話すことにより、大人数の大きな動きになるのかもしれないと思いました。
(スタッフ雨谷)

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