救民妙薬のハーブ紹介vol.8『ハトムギ』

ハトムギは、中国南部からインドシナ半島の熱帯気候の地域が原産のイネ科の1年草の植物です。中国最古の薬物書『神農本草経』には「薏苡仁(よくいにん)」(生薬)として美容と健康に結びつくものとして掲載され、筋肉が硬直し、ひきつり、屈伸できないもの、慢性の神経痛を治すとあります。

ハトムギ

ハトムギ

種子からの抽出液はローション、クリーム、パックに利用し、他にもリウマチ痛などに効果があるといわれ、腎臓の働きを促し水分代謝をよくし、むくみ解消に役立つとされてきました。

ハトムギの歴史は中国以外でも古く、インド、ブラジル、ギリシア、ローマなどにも保健食などに利用された記録が残っています。日本では奈良時代に渡来したとも江戸時代にきたともいわれています。江戸時代には栽培記録が残されています。米や麦に比べるとおよそ4倍の収穫があることから「四石麦(しこくむぎ)」と呼ばれていました。ハトムギの名前は鳩が好んで食べたことから名付けられたとの説があります。

ハトムギ

収穫は、出穂や開花がそろわないうえ成熟した粒は脱粒しやすいので7割くらいの粒が茶色になったら根元で刈り取り、3日〜1週間程天日で乾燥します。これが生薬の「薏苡仁(ヨクイニン)」です。「薏苡仁」は健胃、解熱、利尿、解毒の効果があるので慢性胃腸病、潰瘍、下痢、リウマチ、神経痛の痛み、イボ取りと美肌保全効果もあるとされます。

ハトムギの花序

ハトムギの花序は垂れ下がる

ハトムギの姿は非常にジュズダマに似ていています。ジュズダマよりも種殻が薄くて割れやすく柔らかいのが特徴です。また、ジュズダマは多年草で野生化する傾向にあります。ジュズダマの花序は上向きで、ハトムギは垂れ下がる傾向があります。種は4月に蒔き、9〜10月頃が収穫期となります。発芽率も良いので、自分で育ててハトムギ茶を作ってみてはいかがでしょうか?

ハーブガーデンで育つハトムギ

ハーブガーデンで育つハトムギ(手前はアイ)

ハトムギの楽しみ方

料理に

熟した実を収穫し、茹でてサラダや炒め物や粥、スープや茶碗蒸しの具などに利用します。
味噌に加えることもします。

ハトムギ茶

殻(苞鞘(ほうしょう))の付いたままの種子を鍋で香ばしくよく空炒りし、ハトムギ茶として1日量15~30gを煎じてお茶代わりに飲みます。

収穫したハトムギ

成熟したハトムギの種子。炒ってお茶にします。

ハトムギ茶

ハトムギ茶 こちらは水出しです。色はうすいですが香ばしさが感じられ飲みやすい風味です。

救民妙薬では

ハトムギ、ジュズダマ ともに掲載あり
寸白薬(サナダムシによって起こる病の薬)として記載があります。のちの水戸市医師会会史編纂委員会による『救民妙薬注解』には「寸白の虫には如何であろう」との考察があります。

救民妙薬とは?

「水戸黄門様」として知られる水戸藩2代藩主・徳川光圀公が藩医穂積甫庵(ほづみほあん)に命じてつくらせた日本最古の家庭療法本(1693年)。
手帳ほどのサイズで、中風の妙薬にはじまり、酒毒・蛇咬(へびくい)・痔・しもやけ・虫歯・頭痛・脚気・腹痛・おこり(マラリア等の熱病)等、手軽に入手できる薬草を主に用いる処方397種が130項にわたって平易な言葉で記載されており、明治・大正まで続くロングセラーとなりました。

→「水戸黄門」が作らせた日本最古の家庭療法本『救民妙薬』とは?

 

参考文献

「自分で採れる薬になる植物図鑑」柏書房 増田和夫監修
「くらしの野草と漢方薬〜ハーブ・民間薬・生薬〜」新日本法規
「ハーブのすべてがわかる事典」ナツメ社

ブログ著

鈴木さちよ

ブログ監修

管理栄養士 坂本禮子

インスタグラムでもハーブ、庭作り、身近な植物などについて発信しています

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ハーブ事典でもこのハーブをご紹介しています

 

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