雛祭りを彩る吉祥の木『モモ』
モモの学名は Prunus persica (L.) Batsch です。属名のPrunusは「スモモ」に対するラテン語の古名です。種小名のpersicaは「ペルシアの」という意味です。植物としての特徴は、高さ3〜5mの落葉小高木で、4月頃葉がでるより早く白色〜濃紅色の5弁または八重咲の花をつけます。サクラやウメと同属です。

モモの花
3月の3日は桃の節句です。この日に雛人形を飾り、雛祭りと呼ぶのは日本特有のことだそうです。『源氏物語』には、3月3日に陰陽師を呼び、お祓いをした人形を船で流すという情景が描かれていて、人形を人の身代わりとして穢れを払って水に流すという神事について記されています。この人形を用いることから雛人形を飾る慣習に発展したと考えられています。

旧暦の3月3日は現代の暦で言うと4月19日頃にあたります。この頃ちょうど桃の花も見頃を迎えます。雛祭りを「桃の節句」といい、モモを飾るのはなぜなのでしょうか。その理由としては、モモは原産国でもある中国では「仙果」と呼ばれ、不老長寿の果実として尊重され、霊力のある特別な植物とされてきたことによると考えられます。
日本神話においてイザナギが黄泉の国から逃げ帰る時、モモの実を投げて鬼を遠ざけた話が登場します。古事記にはイザナギがモモに「日本人が苦難の時に助けてほしい」と依頼し「オオカムヅミノミコト」という名を与えたとあります。ほかにも、3月3日にはモモの花の流れる川の水である「桃花水」を飲むことにより禊ぎをするという風習や、桃の実は鬼が恐れるものであり、人に害を及ぼす鬼を殺してしまうといういわれがあるそうです。そして、「桃」の字は木篇に「兆し」と書きます。未来を予見して魔を払うといった呪術性を帯びた木でもあります。

モモの葉と果実
浄血や鎮痛、緩下作用のあるモモの種子は生薬の「桃仁」、花は「白桃花」として薬として用いられてきました。江戸時代の頃には、夏の土用に桃湯に入るという風習があったそうです。桃湯には葉の部分を用います。モモの葉にはタンニンなどが含まれ、消炎、解熱、保湿作用などがあるため、湿疹、虫刺され、日焼けなど、夏の暑い時に多い肌トラブルには最適です。
モモは一本の木にたくさんの丸々とした実をつけるため、繁栄の象徴でもあるともいわれます。魔除けの道具の「卯杖(うづえ)」や「卯鎚(うづち)」の材料にも使われています。縁起の良い木として、雛人形飾り、桃太郎物語もしかりですが、日本の建造物や道具にもモモがデザインされたものが残っています。この機会に身近にあるモモのモチーフを探してみてはいかがでしょうか?

日本料理屋さんのお皿にモモのモチーフを見つけました
モモの楽しみ方
桃湯
水洗いした新鮮な桃の葉を30枚ほど用意します。(ドライの葉の場合は2つかみほど)水から約15分煮出して濾過した煎剤をお風呂に入れて利用します。肌をしっとり落ち着かせてくれます。
*2026年のブログでは、日本の行事や文化に馴染みの深い植物をご紹介しています。
参考文献
「日本のハーブ事典」東京堂出版 村上志緒著
「自分で採れる薬になる植物」柏書房 増田和夫監修
「有職植物図鑑」平凡社 八条忠基著
ブログ著
鈴木さちよ
ブログ監修
管理栄養士 坂本禮子

